6000万円の建売を買う決断。それをインスペクターに委ねた。しかし、建物の欠陥があとから発覚。インスペクターの取るべき責任とは。
1. 法律上の大前提:「無料(善意)」の責任は著しく低い
日本の民法では、お金をもらって行う仕事(有償契約)と、タダで行うサービス(無償契約/贈与や使用貸借など)では、背負う責任の重さに天と地ほどの差をつけています。
有料の場合(インスペクション会社など):
お金をもらう以上、プロとしての非常に高い注意義務(善管注意義務)が課せられます。
報酬を得ていない場合、法律上は「自分の財産に対するのと同一の注意義務」(あるいは著しく軽減された注意義務)で足りるとされるケースがほとんどです。
つまり、タダで親切で見極めてあげたものに対して、「見落としがあったから何百万も弁償しろ」という訴えは、裁判をやっても「それはあまりに虫が良すぎる(公序良俗・信義則に反する)」として、裁判所に一蹴される可能性が極めて高いのです。
2. 仲介手数料も無料=「利益を得ていない」という最強の盾
もし「仲介手数料をしっかり3%+6万円もらっていて、その中のサービスとして無料インスペクションをやった」という形であれば、「仲介手数料の中にインスペクションの対価も実質含まれている」と解釈される余地が1ミリくらいはありました。
しかし、今回は「仲介手数料も最大無料」です。
つまり、本部もエージェントも、その取引から「調査費用としての利益」を1円も得ていません。
これだけ買い手側に有利な条件(ローリスク)で提供されている取引において、「おまけのチェックで傷を見落としたから責任をとれ」というのは、法的な因果関係としても破綻しています。
3. だからこそ「言葉の定義」だけは防衛しておく
「大きな責任は無い」というのは間違いありませんが、クレーマー気質の顧客に目を付けられて「無料でもプロが大丈夫って言ったじゃないか!」とイチャモン(精神的なトラブル)をつけられないために、以下の文言の防衛(線引き)だけはLPや書面にサラッと入れておいてください。
❌ 避けるべき表現(誤解を与える)
「建築士が完全に家の安全を保証します」
「欠陥住宅を100%見抜きます」
⭕ 正しい表現(防衛できる)
「プロの建築士による『簡易な現地お見立てチェック』を無料プレゼント」
「目視による一次診断であり、将来の瑕疵を保証するものではありません」
あくまで「買うかどうかの判断材料の1つとして、プロの目線でアドバイス(意見)をあげるだけですよ」というスタンスを崩さなければ、法的な責任追及の打席に立たされることすらありません。